MT. FUJI TRAINING GUIDE
富士山登山のトレーニング方法
初心者向けメニューとおすすめの山
富士山では、山頂まで登る体力だけでなく、疲れた状態から安全に下山する脚力が必要です。自宅での運動と実際の練習登山を組み合わせ、6〜8週間かけて準備しましょう。

登頂できても、安全に下山できなければ登山は完了していません。
富士山は技術的に難しい登山道ばかりではありませんが、標高3,776mまで長時間歩き続けます。富士宮ルートは登り約5時間・下り約3時間、吉田ルートは登り約6時間・下り約4時間が公式の目安です。休憩や混雑、個人差を考えると、実際の行動時間はさらに長くなる場合があります。
01
WHY TRAIN?
富士山で必要になる4つの力
持久力
長時間、会話ができる程度のゆっくりしたペースで歩き続ける力です。
下半身の筋力
太もも・お尻・ふくらはぎを鍛え、登りと長い下山に備えます。
下山の安定性
小さな歩幅で、岩場や砂利道を安全に下るバランス力が必要です。
高所でのペース配分
標高が上がっても急がず、自分の体調を確認しながら歩く力です。
標高だけで山の難易度は決まりません歩行距離、登山口からの標高差、岩場、下山時間、天候によって難易度は変わります。バスで標高約2,700mまで移動できる乗鞍岳より、長時間歩く丹沢山のほうが体力的に厳しく感じることもあります。
02
6–8 WEEK PLAN
初心者向けトレーニング計画
| 本番まで | 自宅・日常で行うこと | 練習登山の目安 |
|---|---|---|
| 8〜7週間前 | 30〜45分のウォーキングを週3回。階段を日常に取り入れる。 | 日和田山などの短い低山 |
| 6〜5週間前 | 坂道・階段を週1〜2回。下半身の筋力トレーニングを週2回。 | 高尾山を麓から往復 |
| 4〜3週間前 | 2〜4kgのザックを背負い、2時間以上歩く練習を行う。 | 赤城山など3〜5時間の山 |
| 3〜2週間前 | 実際の登山靴・雨具・ザックを使い、補給方法も確認する。 | 丹沢山または蓼科山 |
| 2〜1週間前 | 疲労を残さない範囲で軽い運動。高所登山後は回復日を確保する。 | 乗鞍岳・立山は任意 |
| 最後の1週間 | 睡眠と回復を優先。強い筋力トレーニングや長距離登山は行わない。 | 登山は休み、装備を確認 |
運動習慣や既往歴には個人差があります。痛みや強い息苦しさがある場合は中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。


03
HOME TRAINING
自宅でできる4つの基本運動
富士山を安全に登り、最後まで自分の足で下山するためには、太ももやお尻の筋力に加え、バランス力と体幹も重要です。自宅で取り組みやすい4つのトレーニングを紹介します。
01
LEG STRENGTH
スクワット
15回 × 3セット


足を肩幅程度に開き、膝とつま先を同じ方向へ向けます。椅子に座るようにお尻を後ろへ引きながら膝を曲げ、ゆっくり元の姿勢へ戻ります。太ももとお尻を鍛え、登りの脚力と下山時の安定性を高めます。
POINT膝が内側に入らないよう、膝とつま先を同じ外側の角度へ向けます。
02
STEP POWER
レッグランジ
左右各15回 × 3セット


まっすぐ立った状態から片足を前へ大きく踏み出し、両膝をゆっくり曲げて身体を下げます。その後、前足で床を押しながら元の姿勢へ戻ります。登山道の段差を上る力と、下山時に身体を支える脚力を鍛えます。
POINT上半身を前へ倒しすぎず、前脚の膝とつま先を同じ方向へ向けます。
03
BALANCE
片足トレーニング
左右各20回 × 3セット


片足で立ち、床から浮かせた脚を股関節から円を描くようにゆっくり回します。上半身が大きく揺れないように、お腹に力を入れて姿勢を保ちます。岩場や段差で必要になるバランス力と、足首周辺の安定性を鍛えます。
POINT転倒が不安な場合は、壁や安定した椅子へ手を添えて行ってください。
04
CORE
ニートゥチェスト
15回 × 3セット


床に座って両手を身体の後ろにつき、上半身を少し後ろへ傾けます。両膝を胸へ引き寄せた後、足を前へゆっくり伸ばします。登山中の姿勢を支える体幹と、段差で脚を持ち上げる力を鍛えます。
POINT背中を丸めすぎず、お腹に力を入れた状態でゆっくり動かします。
無理をしない最初から3セット行う必要はありません。慣れない人は1〜2セットから始め、正しい姿勢でゆっくり行いましょう。膝や腰に痛みが出た場合は、すぐに中止してください。
下山対策階段を下りる練習も加えましょう。手すりを使える安全な場所で、小さな歩幅、膝を伸ばし切らない姿勢、静かな着地を意識します。
04
PRACTICE MOUNTAINS
富士山前におすすめの練習登山7選
すべての山に登る必要はありません。各段階から1座を選び、低山、長時間歩行、高所体験の順に進めると、自分の苦手な部分を確認できます。
STEP 1
LOW MOUNTAINS
登山靴と山道に慣れる

日和田山|埼玉県
初めて登山靴やザックを使う人に適した低山です。緩やかな女坂を使えば、山道での歩き方や小さな歩幅で下る練習ができます。余裕がある人は高指山・物見山方面へ歩行時間を延ばします。
- 確認すること:登山靴、ザック、下山時の膝
- 注意:男坂には急な岩場があります。初心者の下山は女坂がおすすめです。

高尾山|東京都
ケーブルカーを使わず麓から歩くことで、2〜4時間程度の登りと下りを経験できます。体力に余裕があれば城山方面へ距離を延ばし、水分や行動食の量も確認しましょう。
- 確認すること:連続歩行、水分、行動食
- 注意:コースにより路面や難易度が異なります。通行情報を確認してください。
STEP 2
LONGER HIKES
岩場と長時間歩行を経験する

赤城山・黒檜山|群馬県
黒檜山・駒ヶ岳コースでは、急な登り、岩場、階段の多い下りを経験できます。低山を問題なく歩けた人が、脚力とバランスを一段上げる練習に向いています。
- 確認すること:岩場、急坂、疲れた状態での下山
- 注意:濡れた岩や木の根では滑りやすくなります。

丹沢山|神奈川県
大倉から塔ノ岳を経由して丹沢山を往復する場合は、標高以上に長い行動になります。富士山前の本格的な体力確認に適していますが、初めての練習登山には向きません。
- 確認すること:長時間歩行、補給、疲労後の下山
- 注意:時間や体力に不安がある場合は、塔ノ岳で引き返してください。
STEP 3
HIGH ALTITUDE
2,500m以上・3,000m級で体調を確認する

蓼科山|長野県
七合目登山口からのルートは山頂まで登り約2時間が目安で、将軍平から先には岩場の急登があります。標高2,500mでの呼吸、岩場の歩行、防寒着の使い方を確認できます。
- 確認すること:高所のペース、岩場、防寒
- 注意:大きな岩が続く下山では、焦らず足場を選びます。

乗鞍岳・剣ヶ峰|長野県・岐阜県
標高の高い畳平から歩き始められるため、初めて3,000m級の空気や寒さを体験したい人に向いています。一方、登山口が高いため、長時間歩行の練習にはなりにくい山です。
- 確認すること:頭痛や吐き気、呼吸、寒さ
- 注意:無理に速く歩かず、体調不良時は高度を下げます。

立山・雄山|富山県
室堂から雄山までは登り約2時間、下り約1時間40分が公式の目安です。3,000m級でのペース配分、気温の変化、急な登り下りを経験できます。
- 確認すること:高所の体調、ペース、防寒
- 注意:一ノ越から先は急な登りです。混雑時は落石やすれ違いにも注意します。
05
STEP UP
おすすめのステップアップ順
→
→
→
→
富士山を目安にします。ただし、運動習慣がない人が短期間で急に負荷を上げることは避けてください。
06
DESCENT
富士山では下山の練習が重要

SAFE DESCENT
疲れてからも安全に歩く
- 小さな歩幅で下る
- 膝を伸ばし切らない
- 足裏全体で静かに着地する
- 疲れても走らない
- 痛みが強くなる前に休憩する
平地のウォーキングだけでは、下山時の脚力やバランスを十分に確認できません。練習登山では、登頂後の下りまでをトレーニングとして考えましょう。
07
PRACTICE CHECK
練習登山で確認すること
✓本番で使う登山靴を履いた
✓ザックを背負って4時間以上歩いた
✓下山後に強い膝痛が出なかった
✓水分と行動食の必要量を確認した
✓雨具と防寒着をすぐ取り出せた
✓疲れた状態でも安全に下山できた
体力があっても高山病には注意
筋力や持久力を高めても、高山病を完全に防ぐことはできません。乗鞍岳や立山へ登る目的は「高山病にならない身体を作ること」ではなく、高所での自分の体調と適切な歩行ペースを確認することです。
富士山当日は五合目で身体を高度に慣らし、ゆっくり一定のペースで歩きます。頭痛、吐き気、強い倦怠感、ふらつきなどが現れた場合は無理に登り続けず、ガイドや山小屋スタッフへ伝え、高度を下げる判断が必要です。
08
FINAL WEEK
本番直前に避けたいこと
FINAL CHECK
富士山へ出発する前の体力チェック
このチェックは登頂を保証するものではありません。当日の天候、体調、登山道の状況を確認し、山頂よりも安全を優先してください。
NEXT GUIDE